テキサス・ツアーについては書き続けますが、ここ数日の間にあまりにも変なことがあったので、こりゃあ書き留めておかねば・・と、テキサス・ツアーではなく、生のテキサス生活についてお話させてください。
数日前ラスティーの牧場から、ルナとサニーを引越しました。スーザンの牧場は家から約5分ほどで、ラスティーの牧場よりもかなり近く、広大な土地に馬たちを自然に放牧しています。
ラスティーの牧場はサボテンやトゲトゲした植物が多く、いかにも西部の荒野という感じがするのに対し、スーザンの土地は湧き水があり池も数個あり、潤いを感じる土地。そこに馬が20頭ほど放し飼いにされていて、ルナとサニーにとって、まるで夢のような環境です。
しかし、ラスティーの牧場を引越しする時に、私はなぜか「またすぐに戻って来るかもしれないけど、とりあえず家の近くのスーザンの牧場を試してみるわ」と言っていました。ラスティーは「いつ戻って来てもいいからね」と言って、快く私を送り出してくれたのですが、まさか数日で戻ることになるとは、その時には思っていませんでした。
私がスーザンの牧場に初めて訪れた時、ジムは車から降りてきましたが、私とスーザンに向かってではなく、家の中に入っていきました。彼はものすごい長身で、プラスとても痩せている30歳前半の男性です。身体全体は刺青に覆われています。私は直感で、(あの人の近くには寄りたくない)という嫌な感じを受けたのですが、でも後から話してみると、なかなか気の優しそうな兄ちゃんでした。
ですから、人のことを刺青などの外見で判断している自分の心の狭さを反省し、初めに感じた直感を、自分の判断が間違っていたと、思いなおしていました。ところがどっこい、今回ももれなく、やっぱり直感を侮ってはいけないと、思うに至るのでありました。
スーザンは私と同じくらいの年齢で、彼女の娘さんは19歳くらい。しかし、1年前に不慮の事故で亡くなったそうです。自閉症だったらしく、学校には生まれてから一度も通ったことがないそうです。彼女はお母さんのスーザンが運転していたゴルフカートから落ちて、頭を打って5日ほど病院で昏睡状態になった後に、結局は助からずに亡くなったそうです。
そんな事故があった後、スーザンはキリスト教に目覚め、フロリダの有名なキリスト教原理主義の教会に行き、ジムと出合ったそうです。やはり約1年前のことです。ジムはその当時、癌で余命があと3ヶ月と宣告されたそうですが、キリスト教に改心し祈りによって、完全に癌が快復したとのことでした。
牧場に昔から住んでいる、私の母くらいの年齢で、元競馬馬の調教をしていたというジュディーから、昨日彼らの過去の話を何から何まで聞いてしまったのですが、もう、目がクラクラするような、ワケの分からない話がいっぱい出ました。家に帰ってから、私はその内容を夫に伝え、「これったら小説になると思わない!?」と話しますと、夫曰く「気分が悪くなるチープな小説にはなるかもしれない」とのこと。
今これを読んでくださっているあなたさま。少なくても登場人物の名前が、ジムだとか、ジュディー、スーザンなど、短い名前でラッキーだったと思ってください。もし登場人物がグルーシェンカ、スメルジャコフ、アレクセイなど言われた日にゃあ、名前を覚えるだけでも一日が終わってしまいます。
さて、スーザンの5歳の息子ジョエルのお父さんは、実は昔、青少年に性的危害を加えていた犯罪者だったということで、スーザンの亡くなった娘さんにも、性的虐待を加えていたとか、そんな話も聞きました。またスーザンが1年前に行った教会から、15歳の未成年の家出少女をテキサスまで一緒に連れて帰って来て、でもその子は実はジムと性的関係があった・・などなど。ああ、なんだかワケが分かりません。でもって、その未成年の少女はスーザンと女の戦いをして、彼らの家を出て行ったとかなんとか・・・
ま、しかし、そんな話だけでしたら、私の馬たちが彼らの原っぱにいることには、全く差支えがないので、(世の中にはいろんな人がいるのねえ)と、私は自分と馬ちゃんたちの世界を守っていればいいだけの話です。が、これはちょっと危ないかも、と思えることがあったのです。
それは、どうもジムがパラノイアっぽい・・ということでした。しかも、パラノイアが小型小銃をいつもポケットの後ろに突っ込んで持っている、という非常に危ない状況でした。
パラノイアのジムは、私とスーザンが彼らの家のキッチンで話しをしていると、これから外に行って新しい銃の具合をテストして来ると言い、外に出て行きました。純粋で優しく見えるスーザンは、それに対しなんの抵抗もないかのごとく、「OK。でも弾は高いから2発までにしてちょうだね~」とニコニコしながら言っています。
テキサスってそういう所だったのかに?と思いつつ、スーザンと話しを続けていると、彼女は最近ジムが神父さんと話しをしている時に、拳銃で撃たれたという幻想を見たらしいという話をしだしました。それだけでなく、ジムはここのところ立て続けに、自分が銃で誰かを殺したとか、反対に自分が銃を撃たれて殺されたとか、そういう夢を見ているのよと、まるで世間話でもするように、ケラケラと話しを続けています。
そうしているうちに、2発銃を撃ち終えたジムが外から帰ってきました。一体何を撃ってきたのか気になりましたが、目がギラギラしているジムには、そのことには触れずに、少しずつ帰る姿勢を整えていますと、スーザンが同じ話しを続けやがる。
なので、興奮してアドレナリンがギンギンのジムは、鼻の穴を膨らませて、自分が最近見ている幻想や夢は、もしかしたら現実に起こることを示唆しているのかもしれないという話しを、小学生なみの語彙で話し始めました。でももし、彼が日本語を知っていたら、“示唆”などという単語は知らなかったに違いありません。
彼の口調を日本語に直すとこんな感じです。「オレよ、最近、夢見ちまってよ。それがめちゃこえーんだよ。だってよ、銃の弾が胸に突き抜けるんだからよ、オレさ、夢の中でめっちゃ怒っちまったよ」という感じ。
そんな奴が目の前で、ポケットに小型小銃を持って、「だからよ、やっぱオレは防弾チョッキを着なきゃいけねえって思ってよ、最近、オンラインで注文したんだよ」と言っています。牧場で働いている人に、なぜ故に防弾チョッキが必要なのか???
「それはキミがパラノイアだから」とはもちろん言いませんでした。というのも、彼のギンギラギンの目を見たら、この人は冗談で言っているワケではない、ということが分かったからです。
彼は話しを進めました。というか、話が止まらなくなっていた感じでした。「昔さ、人を撃ったことがあるんだよな、オレは」と。私はとにかく話をふんふん聞いているだけだったので、その言葉にも「へえ、そうなんだ」と返事をしたのですが、一瞬おいてまた聞き返してしまいました。「えEEE!人を撃ったって、、銃で?」すると彼は言いました。「初めて撃った時はよ、オレが17歳の時だったんだけどよ」と。
「人を撃ったということは、相手の人はケガをした?」と、心の中でジムが自分のことを殺人者だと、どうか私に告白しないでくれと願いながら聞きますと、「いや、死んだよ」と言います。「でも、他にも、人殺しているぜ」と彼は続けます。
その横でスーザンは、「そんなことまでユキコに話しをするなんて、まったくこの人ったら、本当に正直者なんだから~」と言って笑っています。私は目を丸くしないよう、平常心を保つように、片手を腰にあて方膝をまげて立ち、自分のボディー・ランゲージを、いかにも相手にリラックスした状態だと見せるように立っていました。そして、彼らからゆっくり離れて、じゃあ、また明日ねえ、と自然に帰りました。
書く方にとっても、読む方にとっても、長すぎる話なので
今日はこのへんで・・・
(続く・・)

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