昨日から、ラスティーの牧場のペッパーという馬を調教し始めました。ルナの時もサニーの時も、後から思ったことを書けばいいやと思っていて、日記をつけずにいたのですが、ちょっとした気づきや思ったことなど、その場で書いておかないと全部忘れてしまうので、日記みたいに書いていこうと思います。
私はラスティーのところにルナを連れて行った、約1年ちょっと前には、ルナを引き馬しても言うことを聞いてくれず、完全にド素人丸出しで、ラスティーや彼の奥さんのロレインや、牧場に来る人たちの笑いの種になってたと思います。いや、正確には笑いの種+心配の種でした。心配だったせいか、私がいつも一人で馬とトレーニングしていると、ラスティーは遠くの方にトラックを止めて、ずっと見守っててくれました。ああ、今そんなことを思い出して、ちょっと涙目。
なのに不届き者の私は、時々(見てなくていいよ、あっち行っててよ)なんて思っていました。私は人は好きなのですが、インディペンデントに行動するという自由が、ちょっとでも侵略されることに敏感に反応してしまいます。そして自分の領域が侵害されると、「バックオフ!back off!」(さがれっ)という空気を振りまいてしまいます。簡単に言うと、自分がこうやろうと思ったことに頑固なんです。なので、ラスティーには心配されながらも、また他の馬の熟練者たちに心配されながらも、私には意見しづらい雰囲気をかもし出してたかもしれません。普段は話し易いおばさんなんですが、一つのことにこだわり出すとメラメラと燃えてしまいます。でもラスティーにしたら、危なっかしくてたまらなかったんだろうなぁって、今になって分かります。
雨の日も風の日も馬鹿みたいに、牧場で馬のトレーニングをしている日本人が、ロレインもラスティーも最初はもの珍しかったはずです。でも、1年以上経っても相変わらず、雨の日も風の日もやっているので、だんだんと私のことをリスペクトしてくれるようになりました。それで、1年半ほど前は(扱えない馬を抱えてどうなっちゃうの、あの子は?)と見られてた私に、彼らの馬の調教を任せてくれることになりました。私にしたら、これはとても感慨深い出来事です。と言うのは自分の馬の調教を任せるというのは、ヘレンケラーの両親が彼女の教師としてサリバン先生を選んだ感じ・・と言えば伝わるかもしれませんが、よっぽど信頼されなければ、馬の調教を任せてくれることはありません。しかも、「ユキコにはお金を払わなきゃ」とまで言ってくれて・・・いや、もちろん無料でやりますが、ド素人だと思われなくなったという証拠かと思うと、自分では未だに初心者だと思っているだけに、ビックリ反面うれしくなってしまいました。
昨日はペッパーにフレックスを教えました。両脇に首を曲げるのですが、ペッパーは今までそれを教えてもらったことがなかったようなので、最初は全くできませんでした。でも、少しずつ少しずつ褒めながら教えてあげたら、一日目の調教でできるようになりました。昨日はほんのちょっとそれができたところで、調教はお終い。いい感じのところでスッキリと止めておくと、馬にも私にも良い記憶が残ります。急にできるようになる必要はなく、今日ちょっとだけ進歩があればOK。そのような歩みの中で、馬と人間との良い関係が生まれてきます。なので、一足飛びになにかしてやろう、業績をあげてやろう、達成してやろうという気持ちを、心の中から排除して、馬の今の状態で良しとする、そしてそこからほんのちょっと成長すれば良しとする・・・そのような気持ちを保っていると、調教していても馬も自分もストレスを感じることはありません。人間との付き合いも同じかもしれませんね。
馬はでかいです。なので扱い方を知らないと危ないです。そして、私のように初心者(グリーン)の人間とグリーンの馬の掛け合わせは、馬の世界ではあり得ないタブーです。グリーンのライダーと熟練した馬だと、ライダーは馬から学ぶことができますし、熟練したライダーはグリーンの馬に教えることができます。ところが、私のケースのようにグリーンXグリーン=危険というように、ルナと私は互いに苦しまずに教えあうということはできませんでした。サニーのケースは、またこれがルナよりもっと難しくて、グリーンの私と虐待されてた馬という掛け合わせだったので、私はグリーンな上に、熟練者でも調教するのが難しい、虐待されて人間を信頼できないサニーの調教を、(馬を調教する難しさってこういうものなのね)と、どんな馬でもこんなに難しいんだと思ってやってきました。他の馬の経験がないので比べようがなかったのです。なので、そういうものだと思ってたのです。しかし昨日ペッパーを扱ってみて、(虐待されてきていない、ある程度経験のある馬の調教ってこんなに簡単だったんだ)と、私は初めて、自分の馬たちの調教がいかに大変だったか知りました。
サニーの中に記憶されている、(ロープを持ってる人間にギュウギュウやられるんじゃないか)、(お尻の方に人間が回ったら鞭で尻を叩かれるんじゃないか)、(早く走らないと蹴られるんじゃないか)、(怖いことを無理矢理やらされるんじゃないか)などなどの思いは、いくら私が優しく接してても、彼の中からはなかなか消えないようです。なので私が完全にリーダーシップを握り、サニーのマインドがいつも、(次なにをしたらいいですか?)(指示してください)(私はあなたにフォーカスしています)という状態になっていず、彼に自分で考える余裕を持たせすぎてしまうと、過去の虐待されてた時の記憶か浮かび上がるのか、不必要に怖がったり、頭が別な方向にいってしまって、トレーニングできるどころの状態じゃなくなります。具体的には、例えば私がちょっと舌打ちをしただけで、(あ、走れって言われてる。大変だ、今走らなきゃ尻を叩かれる~)と、急に走り出したりするという具合です。
そこでバランスが難しいのが、私は馬を完全に従わせる調教ではなく、彼らに考える空間を与えたい。理想的には自分が51%リーダーシップをとり、彼らに49%考える空間を与えてあげたいのですが、そのバランスがちょとでも崩れると、つまり空間をあげ過ぎると、今度はサニーが自分がボスになったと勘違いして、私の言うことをちっとも聞かなくなったり、またはリーダーシップを強く取り過ぎてしまうと、その日は私の言うことを従順に聞いたけど、次の日行ったら、嫌だった記憶があって私の方に近づいてこないとか、その時その時の馬の状態に合わせて、調和したリーダーシップを取るのがとても難しいのです。
おっと、アンディーが家のフェンスを作ってくれるので、土地を測りに来ました。ではまた明日。
P.S.
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