テキサスは6月から10月まで日本の真夏以上の暑さですが、ちょっとだけ冬っぽい時もありまして、ここ最近、体の芯に突き刺すような、空気の冷たさを感じています。それで、車を止めて外に出ると、毎日(う~さぶさぶ~)と思うのですが、その寒さはホルターを持って馬の横に行くまでで、サニーが側に来てホルターをつける段階では、寒さを完全に忘れてしまいます。そして何時間でも平気で外で過ごしています。寒いのを我慢して外に居るのではなく、不思議と本当に全然寒くないのです。きっと馬が側にいる時は、馬のことしか考えてないのでしょうね。ちなみに私は普通の人以上に寒がりです。
調教は馬に会うところから始まります。すごく小さなことで、どちらがリーダーであるかハッキリ見せておくと、大きな問題につながらないと考えます。例えば、馬のボディーの右側に立っていて、その反対の左側に行きたい時、自分からノコノコと馬の顔の前を歩いて反対側には行きません。リーダーは私なので馬を動かすのは私。馬の周りを馬に動かされるように、自分が動いてしまっては、どちらがリーダーであるかという序列が崩れてしまって、サニーが放漫になっていきます。
サニーはとても支配的なので、このようなちょっとしたことを怠ると、昨日はものすごく従順だったのが、今日は鬼のように変身してしまう・・というように、今の一歩が一マイルにつながってしまいます。今許した一歩によって、ダダーっと疾走されることにつながるということを何回も経験しているので、これは私自身の体験から語っております。
サニーはよく顔を摺り寄せてくるのですが、(甘えてんのかいチミぃ?かわいちゅぎ~♪)と調教前にスリスリさせてたら、サニーは見る見るうちに俺様モードになってきます。たとえめちゃかわいくても、招待していないのに私の領域に顔を突っ込んできたら、すぐ手で顔を反対側に押します。ただ単に手の平でブロックして、(はい、ここは私の領域。キミが入ってくることを許してないの。悪しからず)というだけで、叱るように払いのけるワケではありません。調教が終わった後には、デレデレ、スリスリ、キスキスしてしまうのですが、これからトレーニングという時に、このような小さなことを許してしまうと、勝手に草を食べようとしたり、私の指示にフォーカスしなくなります。
こういう小さなことをちゃんとやっていると、草がある所にずっと立ってても、彼は私にフォーカスしているので、私がいいよと合図するまで、自分から草を食べようとはしません。なのでロープを引っ張ったり、足で馬の顔の前(顔じゃないですよ)を踏んで、草を食べるのをやめさせたりする必要がありません。でも、私が彼を動かして(あっちに美味しい草があるから、そこに行こう。ほら、ここの草美味しそうでしょ。食べていいよ)と言う時には、リラックスして草を食べます。そして、こちらが動き始めると、ロープで指示して顔をあげさせなくても、自分からすぐに草を食べるのをやめてついてきます。
どっちがリーダーかハッキリしている時は、扱いがすごく楽で馬にとっても安心だと思います。で!このような状態を作るのは、ほんの小さなことを完璧にやっておくことで、馬との関係が随分変わってくるのです。このような馬のしつけは、子どものしつけと全く重なっていると考えます。子どもでも馬でも、強く叱ったりしたくなければ、小さなことをしっかりとやっておくことをお勧めします。小さなことや基本的なことでしつけされていない馬や子どもが、どうして大きなことで急にマナーが守れるようになるのでしょう?小さなことができなければ、大きなことではもっと大きく崩れていく可能性が大です。
さて、昨日はサニーもペッパーも裸で乗りました。まずはサニーをラウンドペン(丸柵)に入れて、その後、ペッパーを連れて来ようと馬屋に行ったら、まだ餌の時間ではなく馬たちは馬屋ではなくパスチャー(馬たちがいる草原)にいました。馬屋ではマリッサがポツネンと一人で掃除をしていました。マリッサは高校3年生。将来獣医になりたいそうです。ラスティーの所で馬を2頭飼っているのですが、お金がないので馬屋で働かせてもらっています。「親にお金出してくれって言えば出してくれると思うけど、親に悪いので自分でなんとかしなきゃ」と、この間言っていました。それで、ラスティーの馬たちの餌あげと馬房の掃除、その他この牧場で馬を飼っている人たちの馬に餌をあげるために、毎日、学校が終わったらここに来ています。
マリッサにペッパーどこにいる?と聞くと、裏のパスチャーの遠くの方で、さっきペッパーを見かけたと言っていました。私は広いパスチャーでペッパーを捕まえるトレーニングもしようと思ってたので、餌で馬たちが馬屋に入ってくるのを待たずに、ペッパーのところに行くことにしました。
数日前の雨でまだグチャグチャしている土の上を歩き、馬屋の裏にあるパスチャーへ行くと、フェンス越しに見えるのは馬二頭とロバが一頭だけ。ありゃりゃ、ペッパーがいない。彼らがいるこのパスチャーはだいたい5000坪くらいでしょうか、かなり広いんです。(ペッパーはきっと奥の方にいるんだな。こりゃ、今日はいい運動になりそうだ)と覚悟して、ゲートを開けて彼らのテリトリーに入り、どんどん歩いて行くと、やっと一番奥の方でペッパーが草を食べているのが見えました。
ラスティーとロレインの馬たちは、パスチャーでは捕まらないので、彼らが馬を使う時にはいつも、餌で馬たちが馬房に来た時に、そのまま馬房に入れたままにしています。彼らは広いパスチャーに出かけて行って、馬を捕まえるということはしないのです。なので、ペッパーは人間がなんでパスチャーにいるのだ?と、遠くからでも緊張している様子でした。そして、100メートルくらいのところまで近づくと、走って逃げました。初めてのことですから、怖いと思われても仕方ありません。
実は私、馬に乗るのは達者ではありませんが、馬を捕まえるのはかなり得意です。ルナとサニーでさんざんトレーニングさせられましたから。それでその頃は、モンティー・ロバーツ、デニス・リース、パレリ、クリントン・アンダーソン、クラウス・ヘンプフリング、マーク・ラシッドなどの本を読み、ビデオを観まくっていました。でも広大なパスチャーで馬を捕まえる方法を、直接教えてくれるものはありませんでした。そこで一番勉強になったのは、自然で生息する馬たちのドキュメンタリーでした。それらのビデオを観る時に、馬たちのボディーランゲージで語られる、彼らの人間関係ではなく、馬関係をつぶさに観察しました。
多くの人たちがパスチャーで馬を捕まえられないのは、人間のやり方を馬が分かっているものだと思っているからではないでしょうか。しかしてっとり早いのは、私たち人間が彼らの社会を学ぶことです。セオリー自体はそんなに難しいことではありません。ただ、人間のやり方を捨てればいいんです。そして自分が馬の世界に入っていけばいいだけです。これまでに何人かの人たちに、パスチャーでの馬の捕まえ方を教えてあげたのですが、彼らはみな何十年も馬と関わっている人たちでした。私が彼らの馬をパスチャーで捕まえて連れてこれるのを見て、彼らは驚いていましたが、その場でやり方を教えてあげると、自分たちで馬を捕まえることができるようになっていました。しかしそういう人たちがなぜ、自分の馬をパスチャーで捕まえられなかったのか?それは人間のやり方を捨てず、馬のやり方を学ばなかったからです。
パスチャーで馬を捕まえる時にまず大事なのは、時間を忘れることです。これは言葉にすると簡単なことのようですが、完全に時間を気にしないということは、現代人には難しいです。というのは無意識にでも私たちは、時間のことを気にしているからです。時間を忘れるということは、意識的に時間のことを気にしていることを捨てるだけでなく、無意識で気にしていることも捨てるということです。でも、無意識の意識を捨てるには、まずは自分の中に無意識で感じていることに気づかなくてはいけません。馬と接していると、自分自身を内観することが修練され、自分の気持ちの動きを繊細に感じることで、馬の気持ちの動きに気づけるようになります。この修練はそのまま人間関係にも活かされます。
昨日のことを例えて言えば、(ああ、このまま掴まらなかったら、あとちょっとしたら暗くなってくるなあ)とか、(ラウンドペンでサニーが待っているから早くしなきゃ)とか、そういうちょっとした時間に対する意識をも消します。ペッパーは私が100メートル以内くらいに近づくと、少しずつ動き始め、そして私から離れるために走り出していました。私は(掴まらないぞぉ)とがんばっているペッパーに、(ずっとそんなことをしているつもり?こっちは一日中でも、明日になってもキミが私の方に来てくれるまで、ずっとここにいるんだよ。私はキミが走ることは一向に構わないんだけど、こっちに来た方が楽なんだよ)という気持ちで、ずっと付き合っていました。
彼女が止まれば私も止まります。ダルマさんが転んだをしているような感じです。ダルマさん転んだをしながら、少しずつ近づいて行きますが、ペッパーにとっては初めての怖い出来事なので、私が近づけば走って逃げていきます。彼女が走っている時には、私はロープをグルグル大きく回して地面を叩きつけました。そうすることで、彼女を動かしているのは私である、という関係が出来上がっていきます。つまり動かしている私が群のリーダーです。そして、彼女が止まれば私も動きを止めて、休憩させてあげます。そうやって、リーダーと従う馬の関係を作り、少しずつ距離を縮めていきます。
ルナとサニーの時は、そのような馬の習性を良く分かっていなかったので、私の中で試行錯誤をしながらやっていたため、憤慨したり、慌てたり、イライラしたりと、感情の揺れがたくさんありました。でも、もう慣れたので、昨日はすごく広い所でペッパーがずっと掴まらなくても、苛立つということは一切ありませんでした。ペッパーにしたら怖いはずですから。なので私は自分のボディーランゲージで、彼女に(私についてきなさい。そしたら怖いこともなにもないし、走ったり体を酷使する必要もないのよ)とずっと話しかけていました。
30分くらいそんなことをしていて、100メートル以上離れていたペッパーとの距離が、少しずつ少しずつ縮まっていき、何回かは5メートルくらい前にペッパーが立つようになりました。その時にここぞとばかりに捕まえたら、彼女の方から私を信頼してついてくるというトレーニングにならないので、ロープは持っていましたが、捕まえることはしませんでした。それよりも、彼女から自分の意思で私の後をついてくるようにしたかったのです。最後、ほとんど手が届くところにペッパーが立った時に、私は彼女と向き合うのを止めて、背中を向けてついておいでと後ろを見ないで歩いて行きました。そしてペッパーには結局ロープをせずに、そのまま馬屋に連れて行きました。こういう時に背中から(キミは私に絶対についてくる)というオーラを出します。そのようなオーラは、ついてくることに微塵も疑問を持たないことで出されると思います。もし(馬がついてくるか分からなくて心配・・)と思ったら、リーダーのオーラを出せないと思います。ま、でも、誰にでもついていく、犬みたいな馬もいるみたいですが。(笑)
人間に手荒く扱われていたサニーも、昨日のペッパーようにパスチャーで捕まえられなかったのですが、今はゲートを開けてパスチャーに中に立ち、心の中で(おいで)と言って待っていると、サニーの方から歩いて来てくれます。時々すぐに来ない時もありますが、でも私が5メートルくらい歩けば、それだけで(あ、さからえない)と諦めるのか、私に向かって歩いてきます。
馬によっては遊ぶのが好きで、遊んで遊んで~と近づいてくる馬もいるみたいですね。ま、それはそれで問題があったりします。というのは、そういう馬は人間との境界性を守れなかったりするので、人間に近づきすぎたりします。人間でも甘やかされて育ってきたためか、人との境界線を尊重できなくて、自分の意志が通るまで、どんどん人の領域に入ってくる人もいます。逆に、自分の領域に人を入らせてしまうことで、他人にコントロールされて、どんどん苦しくなってしまう人もいると思います。私は馬を始めてから、このような関係に敏感になりました。人間は時として言葉や、人との複雑な関係に惑わされてしまって、人が自分の領域に入りすぎていることとか、自分が人の領域に入りすぎてしまったとか、気づけないことがあります。
でも、動物のようにシンプルに見ていくと、絡まった糸の関係が見えてきて、おのずと解決方法が見えたります。私を尊重してくれず領域を犯してどんどん入ってくる人がいれば、気づいたらそれ以上入らせないようにすればいいだけですし、もし私が人の領域に入りすぎてしまうことで、相手がカンファテブルじゃないと感じた時には、自分でも知らないうちに与えているプレッシャーをほどいて、一歩離れてあげます。そのように以前は分からなかった人との温度の保ち方が、前よりは見えてくるようになりました。今考えると、私ったらめちゃくちゃだったんだなあと思います。もっと若い時にこのことを知っていれば、自分が傷つくことも、人を傷つけることも少なくて済んだのに・・と思っています。
ペッパーのトレーニングが終わった後に次にトレーニングすることになっているのは、クリケットというラスティーの持ち馬ですが、その馬は超甘やかされてきているので、人間との境界線をよく理解していない馬です。稀に仔馬の時に群で生活したことがない馬にも、そういう馬がいるみたいですね。他者との距離を尊重するということを年長の雌馬たちに教わっていないからです。馬も人間の子どもも、母親だけでなく社会の中で教わることで、他者との距離を保つことを学ぶのでしょう。
さて、ペッパーを馬屋に連れていったら、彼女の餌がありましたので、ご飯を先に食べさせてあげることにし、私はサニーが待っているラウンドペンに戻りました。昨日は鞍を使わずにサニーに乗りました。サニーにはよくそうやって乗っているのですが、昨日は裸で、しかもロープを使わないで、つまり両手を離したまま乗れる練習をしました。裸で乗る時に私が使っているものは2つあって、一つはロープホルターにリードロープがついているものです。もう一つは金物屋さんで買ってきた、細いロープをくるっと輪にしたものです。それはただ単に、首の周りにかけるだけで、口の周りには何もついていません。
昨日はホルターロープを使ったのですが、乗っていて腰の動きだけで、指示が伝わるということが分かったので、両手を離して乗っていました。これは自分のバランスの練習にもなりますが、サニーにとっては私のシートだけで感じる練習になります。サニーはほぼ完璧に私の足と腰の動きだけで、右に行ったり左に行ったり、前足を動かしたり後ろ足を動かしたり、かなり繊細に感じてくれました。が、後ろに下がるのはロープの感触なしにはできませんでした。これは私の体の指示が、明確にできてないためでしょう。
ああ、なんか、書いてたらキリがなくなってきたので、今日はこのへんでやめておきます。なんかいつも長くなってしまいます。馬のトレーニングをしていると、言葉にしきれない感じることがたくさんありすぎです。
P.S.
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マミーさんこんにちは。
勝手に記事の一部を使わせていただいています。
http://blog.goo.ne.jp/nijiirokyouiku3/e/912777d67c5c7154cac962478f9cda7c
報告が後になってしまいすいません。
投稿情報: なおみ | 2009/12/13 09:15
なおみさん
いえいえ~~。
逆にご紹介いただき、ありがとうございました。
投稿情報: マミ~ | 2009/12/13 10:30