マークの住まいは乗馬クラブのアリーナの上にあるアパートです。彼は自分の住まいから階段を下りるとアリーナがあるんですね。そして、アリーナの横は馬房になっています。ホントに馬だけですよ、この人は。馬だけ。馬だけ人生。叩けば色々な面がでてくるかもしれないと思いきや、このにーちゃんからは馬のことしか叩いても出てきませんでした。(笑)
その他の面としては、かなり強烈なクリスチャンなお方のようで、彼の人生観の中心は、キリスト教の教えが確固としてあるようでした。面白いのは、彼の住まいに入るとカウボーイブーツがズラーっとあるのですが、その中に十字架が大きくあしらわれたカウボーイブーツを見っけ。
実はうちの息子はプチ・エスパーなところがって、彼はマークに会う前に予測していたことがありました。「マークはブーツのコレクションがたくさんあるよ」って。(笑)なぜ故にそう思ったのか?でもその通りだった。しかし、こんな予測が当たっても何の得にもなりません。まあ、だけど、少なくても害にもならないからいいけどサ。しかし、ブーツのことは予想内だったのでビックリしませんでしたが、マークにはビックリさせられたことがありました。
私たちがマークのお家で彼に作ってもらった、お昼のサンドイッチを食べ終わった頃、彼の携帯に電話があり、馬を連れたお客さんが外で待っているということでした。ランチした後に叩いても何も出てこなかった、あまり意味のない会話をやめ、私たちはすぐに外に出て行きました。
外にはなにやら屈託のないおばさんたちがお二人。ボディーもお顔もタラリ~ンとした幸福なご様子から察するに、生きることにあくせくしなくても、お金のある人たちなんだろうなあ、という匂いが漂ってきています。おばさまお二人は、おほほ、おほほとマークをチヤホヤしながら会話をし、馬を一頭マークに手渡していました。
サドルブレッドのかわいいお顔の2歳の雌馬です。目がアーモンドのようにクリっとしていて、これまた馬まで超お嬢様のお顔です。マークはその子を調教が入っている他の馬たち3、4頭の横にロープでつなぎました。新米のお嬢様がピカピカに見え、かわいそうだけど、他の馬たちがなんだか汚れて見えました。きっと、このお嬢様もここに滞在する1ヶ月の間に苦労して、他の子たちみたいに(世の中には怖いことがたくさんあるんだ)という魂が吹き込まれてしまうことでしょう。
でも、お帰りの時には、マークがちゃんとホースで洗って、髪をとかして綺麗にしてあげるので、喋れない馬からは、その一ヶ月の間に昔話題になった何とかヨットスクールのような訓練を受けていたとは、マークをチヤホヤしているおばさまたちが知ることはないでしょう。なんだか、ここに来て変な一面を見ちゃったよなあ・・・。明らかに言えるのは、将来、私は自分の目の届かない所で、他の誰にも自分の馬を調教させることはないということでした。
「この子はもう鞍を着けたことがあるの?」とマークがおばさまたちに聞きました。「おほほほ~、生まれてからインプリントした限りで、この子には何もしたことないのよ~。でもかわいいでしょ~?」と言っています。っつーかさ、お前らさっきから「かわいい、かわいい」を連発しているぞ。マークにとっては馬がかわいいかどうかなんて、屁でもないことをこのおばさまたちは全く知らないようです。(この子が逆らえば、ハミをガンガン引っ張られて、口から血が出ることもあるんだどーー)。しかし私は下を向いてアリーナの砂をブーツで蹴りながら、このおばさんたちの能天気さに目をつぶっていることにしました。
鞍もつけたことがないと聞くと、マークはロープをおもむろに首の下でくるっと結び、簡易の手綱を作っていました。そして「じゃあ、今から訓致するよ」とおばさまたちに言い放ちました。おばさまたちは黄色い声で、「マーク、危ないからやめてえ~」と言っています。そんな声をマークは無視して、かわいいお目をしたお嬢様の横で、ジャンプジャンプ。ん、でもって、ジャーーーンプッと、へロっと乗ってしまいました。そして歩き出しました。
ええ~!?訓致ってこんな風にするんかい?何の前置きもなく!これにはビックリ。マークは歩いている馬を今度はトロットさせ、そして駈足を始めました。鞍なしの裸馬です。アリーナを大きく走ってくると、サッと馬から下りて「この子はもうブロークだよ」って、驚くおばさまたちに向かって言いました。おばさまたちにとっては、ちょっとしたエンターテイメントだったでしょう。調教に払うお金はもうこれだけでも元が取れたようなもんです。
後からマークに聞くと、10頭に1頭くらいはこんな風に何もしなくても、すぐに乗っても大丈夫な馬がいるそうです。しかし、本当にマークの手に渡されてから10分もしない間でした。マークはただ体をさすったりしていただけでしたが、その間に馬のことを感じ取っていたのでしょうね。しかし、やんちゃな兄ちゃんや。
ところがマークは馬で怪我をしたことがないって言うのですから、運動神経がそもそもいいのと、あとは野性の勘のような、勘が働く人なんでしょうねえ。左脳を使って観察しているというよりは、見ていないようで、実は一部始終をぜーんぶ右脳で見ている人という感じでした。そういう感性のある人ではないかと、私は最初から感じていたので、私は突然、調教がされていない若い馬たちとトレイルに行くぞと言われても、この人が大丈夫っていうんだから大丈夫だろうと安心していられたのだと思います。
さて、おばさまたちが帰った後、マークの携帯にまた電話が・・・。なにやら緊急の状況のようです。電話を切った後マークは私たちに、「牛が9頭逃げたから、これから捕まえに行くよ。キミたちも準備して」と・・・
(続く)

こんにちは!
「マークライアントの馬修行」シリーズ。楽しく読ませていただいています!
しかしながら、マークさんはまさに馬だけ人生を送るために
生まれてきたような方ですね。
シリーズ(5)までみてきて、本当にすばらしい方だと思いました。
自分が馬と触れ合うようになってからの数ヶ月を思うと
今自分が悩んでいることなんて、ミジンコ以下に思えてきます(^_^;)
世界は広い、マークはすごい、そしてその修行をしているマミ~さんもすごい。
続きが楽しみです★
投稿情報: ウプサ | 2010/06/11 12:28
ウブサ さん
読んでくれてありがとうね~♪
ミジンコかあ・・・
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%82%B3
かわいいとも思える。(笑)
いやあ、ホントに色々な人がおりますねえ。
でもね、長年馬やっている人たちでも、毎日が勉強って言ってます。
やればやるほど、知れば知るほど謙虚に学ぶ姿勢になるのでしょうか。
お互いに学びの途中ですね。
投稿情報: マミ~ | 2010/06/11 22:46