1日目、トレイルライドから戻ると、マークは若い馬のDespooking(恐怖を取り除く)、またはDesensitize(脱感?)の調教をしました。ナチュラル・ホースマンシップでは、馬が怖がるビニールの袋などを徐々に馬に慣らさせて教えます。
が、マークはその逆でした。彼は馬が引っ張っても首が怪我をしないように、まずは馬のロープを天井の鉄のパイプに結びました。その後、ビニール袋がついた長いスティックを
いきなり! そ、 いっきなり!
馬の近くでガシャガシャ振りはじめました。もうもう、馬はビックラこいて、ロープを引っ張って逃げようとして、ものすごいことになっていました。見てる方も怖くてたまりません。普通は、少しずつ慣らしていくんです。でも、彼のやり方はその真逆でした。
しかし馬が静かになると、マークも手を動かしません。でも馬が怖がって動いている間は、マークはビニール袋がついたスティックを振り続けます。次第に馬は、逃げなくてもビニールに襲われないということを学び、そして大人しく立っていた方が、このビニールは追っかけてこないのだということを学び、そして最後には静かに立っているだけになりました。
ビニールが終わると、今度はマークはやはりガシャガシャ音がする、石ころが入った袋にロープをつけて、馬めがけてほおり投げます。馬は(食べられる~襲われている~)というばかりに逃げようとしますが、上から結ばれているロープがあるため逃げることはできません。そして、ビニール袋の時と同じように、次第に大人しく立ってるだけの方がいいのだということを学びます。
私はランチを食べている時に彼に質問しました。「ナチュラル・ホースマンシップでは少しずつ怖いものに慣らさせるのに、あなたの場合はその逆だけど、どうして?」と。これはジャッジメントして質問したのではなく、その方法を取っているのには理由があるはずだと思ったのです。
すると彼は言いました。「いいかい、野性の中で馬が怖い物に出会う時、怖い物は少しずつ遠慮しながらやってくるかい?怖い物はいきなり出てくるのが常じゃないかい?だから、少しずつ怖い物に慣らさせても、実際に自然の中で危険な物が飛んできた時に、馬がどういう反応をするか、それをコントロールする調教にはならないはずだぜ」と。
確かに。トレイルライドで実際にそういう状況に至ったことが何度かありましたが、そうです、確かにそれらはちょっとずつ来て脅かされたワケではありませんでした。そして、サニーは飛び跳ねてました。例えば、初めて目の前にする流れている川に入ろうとしていた時、サニーは怖がっていました。私がサニーに少しずつ川の水に慣れさせるために、川の前で前に出たり後ろに下がったりを繰り返していました。馬も私も緊張しているその時、薮の中からロープにつながれていない、大きな犬が2匹、ガウガウガウと吠えながらでてきました。
かなり怖い状況でした。逃げる所は目の前の流れる川か、後ろの土手。サニーは後ろの急な上りになっている土手にダッシュ。私は落ちないようにそれについていくだけでした。飼い主が薮から現れて犬を捕まえてくれたので、その場はそれで済みましたが、怖いことがあったら、上に人が乗っていても急に駆け出していては、いつかその馬に乗っている人は、大怪我するかもしれません。それ・・私。
でも、ナチュラル・ホースマンシップのやり方だと、素人でも結構すぐにできてしまいます。なのでそれが効果のある方法だと思われると思います。私もそう思っていました。でも実際には、そのトレーニングだと、馬がものすごくビックリしたり怖い時にでも、飛び跳ねたり、駆け出したりしない調教にはならなかったのですね。
マークのやり方は馬にはきついけど、どうなんでしょう、、、野性で人間と馬がサバイバルするためには、彼のやり方の方が理に適っていると私は思いました。ただ、それをやるにはかなり経験がないと難しいと思います。プレーシャーを解放するタイミングとか、馬が我慢できる程度の恐怖なのか、それとも、それ以上はプッシュしない方がいいのかなど、感覚的に感じながらやらなければいけないからです。
大きな体をした馬が目の前で、のた打ち回るのように暴れる光景はかなり劇的で、見ているだけでもハラハラドキドキしてしまいました。それでもマークはしら~っと全然平気。そんなことをしている間、時々携帯でかかってくる電話をとって、おしゃべりしながらやっています。この人、恐怖を感じないんじゃないかと思えるのですが、決してそれは鈍感だから感じないのではなく、彼は近くで立っている私たちのボディーランゲージまで、鋭く感じていたようでした。
午後、私はマークの自馬に乗せてもらいました。その週末、レイニングの競技で優勝した馬です。私はその馬を一頭あてがわれましたが、うちの息子は見学だけで、マークから馬に乗るお誘いは受けませんでした。彼は次の日に言っていましたが、「Duganはあんまり馬に興味ないね。本人が興味持つまでやらない方がいいよ」と。そうなんですねえ・・ちゃんと見ていたのですねえ・・・。
さて、マークの自馬のディーゼルはピカピカに光っているような真っ黒なクオーターホースでした。彼はその他に1週間くらい前に来た、野性のムスタングを2頭、自馬として持っていました。ディーゼルはレイニングの競技で優勝するくらい、ものすごくトレーニングされているスポーティーな馬です。しかし、、な、な、なに~?ぜんぜんコントロールできなーーい。こんな難しい馬初めてーーー。
(続く)

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