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馬と人間のコミュニケーションの世界をより良きものにするために
日本の環境とは違った観点から見た、馬との関わり方など
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日曜日に総勢10人くらいで、約2時間ほど外乗に行きました。サニーはトレイルライドそのものには慣れてきたものの、見知らぬ馬たちがたくさんいて、人が大声で話ししたり笑いながら、ガヤガヤとした中で外乗に出るのには慣れていません。なので、この日はいつもよりもフガフガ度が上昇し、出発したところからすでに、みんなが歩いているのにトロットし出したり、サニーは自分がどの位置にいたらいいのか混乱し、常に走り出す体制になっていました。
ラスティーが時折、100メートル先くらいから私たちを振り返っては笑っていました。このおじさんはいつも笑っていますが、最近はその笑いの質に、若干違ったニュアンスがあることを読み取れるほど、私はラスティーとは親しくなってきましたので、あれは(何やってんだー?まったくしょうがねえなあ)という笑いであったと理解しています。あのおやじは、“鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス“タイプ。サニーがわからんちんなことをやっているのなら、ビシビシ叩いても、言うことを聞かせろや!って思っていたに違いないのでした。
反面、友人のトリシャは“鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス”タイプ。一年くらい前、私がサニーと外乗に出始めた頃、トリシャはいつも一緒に行ってくれて、ただ単に普通に歩くことのできなかったサニーと私を、彼女はいつも待っていてくれました。彼女は(しょうがねなあ)という気持ちではなく、同情と共感と思いやりを持って、常に私を助けてくれたのでした。
サニーが普通に歩けないというのは、すぐに駆け出したりトロットし出すということです。ところが、3回に一回くらいは、そんなサニーでも至ってふつうの馬のように、リラックスして外乗に行けることはありました。が、今でも何が引き金となるのか分からないのですが、何かのきっかけにフガフガが始まると、そこから普通の状態に戻るすのにはとても時間がかかります。サニーのトレーニングをしてくれた人たちは、やはり同じことを感じたようで、ブレナンも「一度、怖いという興奮モードに入ったら、この子を落ち着かせるのには時間がかかるわ」と、アリーナでフガフガを始めたサニーに乗りながら、言っていたことがありました。
外乗の時にそのモードになると、その間はずっと10メートル歩いては駆け出すような感じなので、輪になってトロットし、静まるまで待ってまた歩き出す、ということを続けます。なので、タランタランと歩いている他の馬が涼しい顔をしていても、サニーは汗びっしょりになっていたものでした。そしてタランタランと歩いている馬に乗っている人は、(景色が綺麗ね、静かでいいわあ、自然はいいわねぇ)と思っているのかどうか、とにかくリラックスして馬に乗っている間、私はと言えば、自分の馬に(落ち着けー、飛び跳ねるんじゃないよー、怖くないよー、大丈夫だよー)と、馬の耳の後ろから、ずっと神経を使って語りかけているのでありました。
このようなフガフガ状態の時に、マーク・ライアンがサニーに乗ったことがあるのですが、マークが力で制しようとすると、30分くらいの調教でしたが、その間少なくてもサニーは前足を高く上げて10回以上は立ち上がっていました。私はそれを見た時に、サニーは決して我がままで立ち上がっているのではなく、本当に何をしたらいいのか分からないのだと思い、今のサニーには強硬な調教が必要なのではないと感じた私は、この馬には時間が必要なのだと思ったものでした。それは去年の秋だったか冬だったか・・・
さて、先日の日曜日の外乗では、サニーは約20分ほどでだんだんと落ち着いてきて、他の馬たちに混じって、頭を下に下げて、リラックスして歩けるようになりました。ところが、トレイルライドの最後の地点で、ラスティーの牧場に戻ってくる一直線の道のりになると、速足からトロットになり出しはじめたので、私はサニーに「誰も走れって言ってないだろう」とつぶやいては、クルクル巻きをしつつ、歩いて戻ることを教えるというフリだしに戻った状態に。
牧場に戻った後は、少し休ませてからアリーナーで練習をさせるために、アリーナの方向に歩かせようとすると、ものすごい勢いで後退して後ずさりを始めました。(ああ、もう、これは、怖いとか、そういうことじゃなくて、ただの我がままだな)と、さすがに思った私は、後ずさりするサニーに、(あ、そ、後ろに下がりたいのね、じゃ、思いっきり下がってもいいよ)と、彼の意思で後ずさりするのではなくて、「バック、バック、バック」と言いながら、私の意思で後ろに下げる状態で、何メートルも後ろに下げることを繰り返しました。それを何回かした後、前に向かって進むよう指示すると、さすがに諦めたサニーは従順に前を向いて、アリーナに入っていきました。
馬も賢いんですね。実は後ずさりしたら嫌なことをやらないで済むといのは、先日、サニーと牛追いをした時に、彼が仕入れた新しいテクニックだったのでした。マーク・ライアンに一度調教してもらった時は、恐怖に慄くサニーが見えましたが、この時のサニーは、これはもう怖いからとか、虐待されてたからとか、そんなことではなかったようで、まるで、少し甘くしているうちに、つけあがってしまった我がままなティーンエージャーのようでした。優しくしつつ手綱は上手にちゃんと握ってなければいけない。いつも楽しく接して、何でもOKよと言ってあげたいけど、でも、その度合いややり方を間違えると、つけあがらせてしまうというのは、人間にも馬にも同じことが言えるのでしょう。
2週間ほど前でしょうか、ラスティーの牧場で毎週木曜日にやっている牛追いに、そろそろサニーも参加できる状態になれたと、私も周りの人たちも、アリーナでのサニーの状態を見て判断したので、私はサニーで牛追いに参加することにしました。
結果から先に言いますと、悲惨な状況になってしまい、私はサニーの鞍を外した後、パスチャーで彼の首を抱きながら、(no more cows, no more cows.. 牛はいいよ、もう、いいよ、牛はやらなくていいよ)と泣いてしまいました。その後、他の人たちがいないところで、これまでのサニーとのトレーニングの経過を知っている、ラスティーの奥さんの前で、やはり泣き崩れてしまいました。その時、日本から来ていた友人2人は、ラスティーの馬を借りてやはり牛追いに参加し、とても楽しい一時を過ごしたようでした。
昨日、訪問見学してきたアンダルシアンの牧場で聞いた、「この馬の場合は、馬が90%やってくれて、人間の力は10%くらいとトレーナーが言っていた」という言葉を思い出します。馬が良ければ牛追いくらいのことは、初心者の人でもちょっと乗るレッスンを受けた後なら、誰でもできるものです。馬がその仕事をやってくれて、上に乗っている人間は・・・大げさに言えば、落ちないように乗っていればいいだけ。なのでトレーニングされている馬に乗った彼女たちには、牛追いって簡単なことだと、きっと楽しめたことでしょう。反面、私は彼女たちに見えないところで泣いているという・・・
だけど、泣けてしまった理由は、サニーができなかったとかそんなことではありませんでした。それは、サニーが昔にインプリントされた恐怖を克服させてあげるために、私が彼の状況をよく理解してあげなかったことで、それまでにやってきた調教を後退させてしまう結果になったこと。その失敗によって、怖い思いだけをぶり返させてしまった馬に、一瞬でも、他の馬たちや他の人たちと比べてしまい、(そのままでいいんだよ)と認めてあげてなかった自分を責めていたために、苦しくなってしまったのでした。
サニーは牛追いのイベントが始まる前、ベテランの馬乗りと一緒に、私と二人だけでアリーナで牛追いをしていた時は、何の問題もなく、牛を次々に追ってゲートに入れることができました。ところが、質が悪く音が割れてしまうスピーカーから、カントリーミュージックとロックがガンガンと流れ始め、他の参加者たちが次々に馬に乗ってアリーナに入って来て、第一チームで私とサニーが牛追いを始めた時には、サニーは脳の中で危険信号が作動したのか、まるで強力なネガティブ・スイッチがオンされたように、一切コントロールできない馬になっていました。その時に彼がとった行動が、ひたすら後退するというものでした。
でも、あの時、もし無理矢理蹴ってでも前にいかせようとしたら、彼は自分の体を反転させてひっくり返ったかもしれない。そこまでの馬の恐怖を私は感じたのでした。それは、アリーナに入りたくなくて、我がままを言って後退している程度ではなかったのです。馬がドキドキしている心臓の音が、ウェスタンの厚い皮の鞍を通してでも、上に乗っていて感じられます。ふくらはぎの辺り、腿の内側の辺りで、ドッキンドッキンという馬の心拍数が数えられるほど、ものすごく大きく体に響いてきます。
(続く)
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