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馬と人間のコミュニケーションの世界をより良きものにするために
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願力と馬力(はじめに)
願力と馬力(1)
願力と馬力(2)
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トレーラーの中にいた他の2頭は全くそのケースで、見て見ぬふりをするしかない。彼らは自分とは縁のない馬たちだった。と言っても、その2頭はトレーラーの中でバタバタしていたが、決して見るに見かねるほど痩せていたわけではなかった。だが3頭の中で一番痩せていた、つながれていた馬と私は目が合ってしまった。そして彼女から(私はここにいるのよ)という合図を送られた気がして、ロニーにそれら3頭がそこにいる経緯を聞いてみた。
「あいつらは放牧地に放し飼いされていて、餌を与えてもらってなかったんだよ。牧草がある時はいいが、なにせ干ばつだったからなあ。」
広い牧場だと、雨が降って牧草が生えていれば、馬に餌などあげなくてもいい。しかし、干ばつで草が生えない時期が続くと、これまで放し飼いしていて、お金がかからなかった馬たちに、餌や牧草を買って与えるという維持費が発生する。そんな折、ちょうど失業したり、商売が上手くいっていなかったりしたら、馬に餌をあげられない人が出てくる。そうなると、タダでいいから持っていってくれ、という馬が市場に出てくるのだ。
つまり“口減らし“だが、日本でも兄弟の多いうちの子が里子に出されるなど、AnimalではなくHumanの口減らしが行われていたのは、そんなに遠い昔の出来事ではない。そう考えると、馬の口減らしくらい仕方のないことと思えるかもしれないが、馬をモノのように生産して、養えなくなったから処分する人たちもいれば、家族のようにかわいがっていたけれど、仕事を失いお金が底をついて、引越ししなければいけなくなった人たちが、馬を人に譲るのとでは、心にかかる負担には雲泥の差があるだろう。
ロニーは続けた。「俺はあいつらがいた牧場で馬の調教していたのだけど、牧場のやつらが調教代を払ってくれないんだ。それで、現金の代わりに馬をやるから連れて行けっていうんだぜ。だけど今のご時勢、馬をもらったって転売できやしないだろ。と言っても、餌を与えられない痩せた馬たちをほっておけないじゃないか。だから、しょうがないから連れて来たんだ。黒人っていうだけで、そういったぞんざいな扱いを受けるんだよ。」
「あの馬たちをどうやって捕まえたと思う?誰も何も手をかけてない馬たちだから、かなりワイルド(野性)になってて、連れて行っていいって言ったって、広い放牧地で捕まりゃしないんだよ。結局、その牧場の馬をその場で借りて乗って、ロープを回して無理やり捕まえてきたんだ。」
テキサスの広い放牧地というのは、人の足で歩き廻れる広さではない。何か人工的な乗り物、もしくは馬がないと牧場中を周ることなどできない。彼ら3頭はそんな広い土地で、人間に飼われているということを知らずに生活していたのだろう。その実は、彼らは誰かの所有物だったにも関わらず。私たち人間も同じだ。社会の中で実は何かに属しているとは知らず、システムの中にいるとは知らず、私たちを所有物のように考えている、別な人間たちが存在することを知らず、自分たちの自由意志で生きていると錯覚している。
私はその日、気になった馬を横目に、ロニーと一緒にアリーナで馬に乗った後、彼らのことを忘れて家に戻った。それから数週間が経った。ロニーにまた会った時に、あの馬たちのことを聞いてみた。すると一番痩せていて私が気になった子以外の2頭は、もうすでに買い手が決まったらしい。と言っても、1頭たったの$100。にも関わらず、痩せていた1頭は$100でも買ってもらえなかったらしい。
「俺が見る限りでは、あのバイヤーは馬のことを知らないから、見る目がないんだよ。あの痩せチビが実は一番運動能力があるんだぜ。しかも、ああいう餌を他の馬に取られてしまって、他の馬より痩せているような馬こそ、大事にしてあげれば、飼い主にすごくなつくもんなんだ。」
続く
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