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馬と人間のコミュニケーションの世界をより良きものにするために
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ルーミー Rumi The Horse #2
ルーミー Rumi The Horse #3
ルーミー Rumi The Horse #4
歯の腫れのため2件の獣医さんでルーミーを見てもらったところ、問題は歯茎の炎症だけではなかった。「この子は発育不全だね」と、診察を受ける前に、パッと見ただけで獣医たちに言われた。「このままもう成長しないということですか?」と聞くと、やはり2件とも同じ答えが返ってきた。「もう3歳だからねえ」と。つまり通常であれば、ある程度まで成長しているはずの時期は、とっくに過ぎているということなのだ。
しかし私の中で、(いや、まだ大きくなる)という希望は消えてなかった。サイズの違う蓋と容器をかみ合わせるのが無理なように、ルーミーの体を変化させるのは、意識の持ち方で変化させられる問題ではない。にも関わらず、(いや、なんとかなる、なんとかしてやる)と無理くり思っていた。ただそのために必要なのは、栄養だけではないと感じていた。栄養と運動、そして毎日、愛情をかけて手塩にかけて育てることで、彼女の中から不安が消え、その後、心と魂が癒され、ルーミーの体内の細胞が、成長しようと応えてくれるのではないか。何の裏づけもないだけでなく、逆に専門家の意見は、私の期待とは真逆だったにも関わらず、そう信じていた。
その頃、トムがルーミーの歯の腫れを確認するために、顔の上から腫れていた痛い部分を不意に押してしまった。と、その瞬間、ルーミーはくるっと反対側を向き、「やめてーっ。蹴るわよーっ」とでも言うように、トムにお尻を向けて威嚇した。攻撃というよりは、自分の身を守るためのディファンスだったと思う。他の馬たちよりも断然小さかったルーミーは、馬たちに押しやられ、食べ物にありつけなかったのだろう。自らを攻撃する者から守るために、やられる前に先に威嚇する、もしくはやられる前に逃げるという姿勢は、弱かったルーミーが生きるために身につけたサバイバル術なのだと思う。
自分を守るためや責められる前に、先にアグレッシブに他者を攻撃するというのは、人間にも見られる傾向ではないだろうか。単に人を傷つけるために攻撃的な人もいるかもしれないが、同じアグレッシブでも、もしディフェンスのメカニズムが働いて、攻撃的になっていると見極めることができたなら、お勧めできる対処法がある。それはこちらから先に愛で包んであげること。
自分の懐に先に入れてしまえば、相手に悪い行動を取る機会を与えずに済む。私はこのことを馬たちに学ばせてもらった。特に弱かったルーミーに教えてもらった。馬でも人間でも、悪い行動を取るよりも、良い行動を取る方が気持ちがいいのではないだろうか。だとしたら、こちらから先に思いやりを持って接し、相手を悪くしてしまうシチュエーションをなるだけ作らないようにしたい。相手を力で征するのではなく、優しさで征するのだ。
“馬にお尻を向けられて蹴られそうになった”という事態は大したことではない。しかし、生身の動物に直接、「あんた嫌い!」と言われたのと同然のボディー・ランゲージを向けられ、トムは「馬にこんな風にされたことないので、ちょっとショックです・・」と萎えていた。顔を軽くブニュっと触っただけなのに、それ以来ルーミーはトムを遠巻きに見るだけで、近づこうとせず、トムがルーミーの傍に近づけるようになるまでに、何日か時間を要した。私が傍に行っても全く逃げようとしないのに、そんな風に人を明確に選別するとは、他の馬からはあまり感じられない特徴のように思えた。
トムがルーミーとの関係作りにおいて、マイナスとなった2つ目の出来事は、彼が朝オレンジを手でむいて食べた後、その手で餌をあげた時、他の馬たちは普通に餌を食べたのだが、ルーミーだけは餌に口をつけようとしなかったことだ。確かあの時、トムは手を洗ってきてから、もう一度試してみるなど修復を試みたけど、(アタチ、オレンジの匂いは大嫌い)とでも言っているように、ルーミーは餌を食べようとしなかった。
この2つの事柄で明確に見えるのは、ルーミーは賢い馬であるが故に、騾馬のように一度体験した嫌な記憶は、なかなか忘れないということ。ちなみに騾馬のレイニングの世界チャンピオンになった人から聞いた話によると、騾馬は一回嫌なことをされたらずっと忘れずにいて、後から人間が忘れた頃に仕返しされることもあると言っていた。馬のルーミーにそこまでの執拗さがあるかどうか分からないが、ディフェンスをする傾向と、(アタチはこれは嫌なの)と思ったら忘れない傾向を、トムがルーミーで体験したその時点で私たちが学んでいたら、それ以上の失敗をしなくて済んだかもしれない。しかし、それもこれも今となって分かったことで、そのような小さな出来事が、これから先に起こる問題に、点と点で繋がることになろうとは、その時には想像もしていなかった。
続く・・
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