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馬と人間のコミュニケーションの世界をより良きものにするために
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※下部にルーミーのビデオがあります
はじめから読まれる場合はコチラから
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ルーミー Rumi The Horse #2
ルーミー Rumi The Horse #3
ルーミー Rumi The Horse #4
ルーミー Rumi The Horse #5
ルーミーの歯の腫れに気づき、うちの子にすることになった後、私は早速、彼女の歯を抜歯するために、動物病院を予約した。夫は思いがけぬ出費に渋々だったが理解してくれた。もともと夫は、馬1頭飼うのに反対してたのだけど、それが2頭になり、3頭になり・・・4頭になると、呆れ果てたのを通り越して、諦めの境地に入っているようだった。しかし、縁があると感じた生き物の命が、お金で買えるのだ。夫には悪いけど、見捨てるわけにはいかない。
ちなみにルーミーをうちに初めて連れて来た時、彼女が生きる古い世界と、新しい世界の境界線を投影しているかの如く、光の膜がかかってボヤけていたビデオの画面が、うちの土地に足を着き、他の馬たちとの新世界にエンターする際には、急に幕が開けたように画面が鮮明になった。数人のビデオ・カメラでこれまで同じことが起こっていて、それは光の反射なのかもしれないけど、なぜか不思議なことに、同様の現象はこれまでルーミーを撮る時にしか起こっていない。
さて、動物病院では今一度レントゲンを撮ってもらい、その結果をコンピューターの画面に映して、獣医さんが個室で説明してくれた。人間の病院のようなシステムだ。獣医さんは「ボクの直感でしかないけど」と前置きした上で、「今抜いてしまってもいいけど、今一度、抗生物質を試してみたい。それが効けば、もしかして運が良ければ抜かなくても済む」と言った。ただし、既に抗生物質は10日も試していた。でも、今止めずにもう少し投与を続けようという提案だった。
私はたとえ歯一本だとしても、自然にバランスが取れている、特に野性が強そうなルーミーの体を人工的にいじるのは、歯だけの問題ではなく、体全体の調和に影響するのではないかと心配してたので、獣医さんの直感に積極的に賛成し、もうしばらく薬の投与を続け、手術は待つことにした。
それから数日経った。しかし腫れは引かない。また数日経った。毎日、一日に何回も見ていたため、腫れが引いているのかどうか、よく分からなくなっていた。そしてまた数日経った。私とトムは「若干、腫れが引いている感じはするね」と話していた。その後から、腫れが少しずつ少しずつ引いていき、更なる薬の投与を始めてから2週間後には、ルーミーの顔の腫れはほぼなくなっていた。ルーミーにはしてやられた。もし、歯が腫れてなかったら、彼女は今頃、私ではない別の持ち主に飼われていたかもしれない。
その頃、同時にルーミーの馴致は順調に進んでいて、グランドではとても従順だった。トムが彼女の顔を押して、お尻を向けられたのはその頃だったが、彼は昔、繁殖牧場で競馬の馴致をしていたし、日本では彼が若い馬の馴致をする機会がないことを知ってたので、トムにルーミーの馴致のため、初騎乗してもらうことにしていた。初めてルーミーが人間を背に乗せる。その準備ができていると感じたトムは、「今日やりましょう」と言った。
私は直感で(本当に今でいいのかなあ?)という懸念はあったのだが、心で感じたことではなく、頭で理解している方を選んだ。それは、グランドではとてもスムーズに、それこそ他の馬たちよりも上手くできてたので、大丈夫だろうと計算したのだ。トムの後ろにもルーミーは引き馬で問題なくついている。彼がやる気なら大丈夫だろう。
ルーミーはとても静かだった。私がリード・ロープを持ち、トムが鐙に足を掛け体重を掛けた。その途端、彼女はゼンマイを巻ききった後に、解き放たれるおもちゃのように、嵐の前の静けさから嵐となり、急に前に進み跳びはねトムが放り出された。そして彼女の勝利という形で、事はあっけなく済んでしまった。なぜ私たちは、彼女の緊張している状態を読めなかったのか?すっかり騙された感があった。
しかし失敗したその場で止めたら、ルーミーが跳びはね走り出せば、プレッシャーから開放されることを学んでしまう。なので、トムはもう一度やる気でいた。その時、私は今度は自分の直感に耳を塞いではいけないと感じ、「ちょっと待って、なんか変な感じがするの。これって普通じゃない。もしかしたら血統かもしれない。だとしたら無理矢理、他の馬たちに通用する方法でやってもダメかもしれない」とトムに伝えた。そして、今の状態で続けても、事態は悪くなる気がすると彼を説得し、それ以上の馴致は止めておくことにした。
その後、私はルーミーを丸柵に残し、家に入って彼女の血統を検索した。ビンゴ!彼女の血統は人が上に乗ると嫌がって跳びはねる、コールド・バックで有名な馬だったのだ。その血統の馬主たちで、跳びはね問題のスレッドがあるくらい、同じ経験をしている人たちがたくさんいた。ではなぜ、その血統の馬が今でも絶やされず好まれるのか?それは彼らにはパフォーマンス・ホースとして、優れた運動神経の馬たちが多いからだそうだ。ルーミーの馴致は一筋縄ではいかなそうだ。
一度家の中に入り情報収集した後、私は丸柵の中に残していたルーミーのところに戻った。そして馬であるルーミーと、人間の妹とでも会話をするように、彼女の傍に立っていた。その時の私には、苛立ちではなく焦燥感と悲しみがあった。自分の思い通りにならないため、心が重くなっていたのではなく、ルーミーのことを理解してあげず、彼女に怖い思いをさせてしまった後悔だった。(分かってあげてなくてごめんね・・)と彼女に話ししていると、なんだか彼女は、私を受け入れてくれた感じがした。なので、先ほどやろうとして失敗した、鐙に足をかけ、全体重をかけて彼女の体に腹ばいになって乗るということが、今なら何気にさせてくれるような気がした。
ルーミーに心で人間の子どもに話かけるように、(大丈夫だよ、怖くないよ)と会話をしながら、同時に彼女の小さな心の動きを読むようにして、(アタチ、それ、ちょっと怖い)と言ったら、(OK、OK、じゃあ慌てずにやろうね)と一旦氣を抜いて、そして彼女の準備ができたら、また(もう一回やってみるよ)と、濡れた和紙を突き破らないように、指で軽く押したり引いたりするように、彼女を丁寧に繊細に扱った。和紙を強く押しすぎて突き破る時が、彼女を跳びはねさせてしまう時だ。そうして鐙に足をかけ、私のお腹を彼女の背中に乗せ、全体重をかけた。彼女は怖がらずそのまま立っていた。そして、首をクルっと後ろに向け、私のことをじーっと見ていた。
続く・・
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ルーミーをうちに連れて来る前、ロニーとルーミーをコーナーに追い詰めて、彼女を捕まえた時のビデオです。後ろで赤いロープを持っているのが私。この時、ルーミーが、(あなたのことは知っているの)と、近づいてきてくれた気がしました。ロニーはルーミーを怖がらせないよう、怖がらせないようにしています。ロープを持っているのは、最終的に優しくやっても捕まらない場合、ロープで捕まえるためです。
ロニーの所から連れてきて、うちに着いたルーミーをトレーラーから下ろす時、画面が変な色になっていたのが、少しするとクリアーになりました。
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